医療機器産業に参入するときに利用できる補助金を解説

医療機器産業に参入するときに利用できる補助金を解説

新型コロナウイルス感染症の影響により私たちの生活様式も変化していく中で、私たちの「医療」に対する考え方にも影響をもたらしています。生活様式の変化により「医療分野」におい型コロナウイルス感染症に加えて日本経済の景気悪化や円高の影響により製造業やIT企業などが苦戦している中で、景気に左右されず安定した収益と今後も成長が見込まれる分野として既存の自社の技術力を活かして「医療機器産業」に参入検討をしている企業が増えています。医療機器産業の品目数が30万以上あり、大企業があまり参入しないニッチな品目も多いため、中小企業にも参入のチャンスがあります。

医療機器産業参入するにあたり設備投資や運転資金が必要です。参入するにあたり政府や地方自治体も医療機器産業を成長分野と捉えており参入するために必要な資金を国や地方自治体が補助する制度があります。

今回は、企業が医療機器産業に参入するにあたり国や地方自治体が必要な資金を一部補助する制度についてご紹介いたします。

ものづくり補助金

経済産業省管轄の補助金で「革新的製品・サービスの開発又は生産プロセス等の改善に必要な設備投資等」を補助する制度です。

【補助上限額と補助率】

申請類型
補助上限額(※1)
補助率
通常枠
750万円、1,000万円、1,250万円
1/2(※2)
回復型賃上げ・雇用拡大枠
2/3
デジタル枠
グリーン枠
1000万円、1,500万円、2,000万円
スクロールできます

(※1)従業員規模により異なる (※2)小規模事業者・再生事業は2/3

【補助対象経費】

機械装置・システム構築費/技術導入費/専門家経費/運搬費/クラウドサービス利用費/原材料費/外注費/知的財産権等関連経費。

事業再構築補助金

経済産業省の補助金です。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者が既存事業から新分野展開・事業転換・業態転換・事業再編に利用できる補助金です。コロナ前(2019年又は2020年1月・2月・3月)とコロナ後の2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること、行政書士、税理士、中小業診断士などの士業で経済産業省が認定している認定経営革新等支援機関と事業計画書を策定することが申請要件になります。

【対象要件】

  1. 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること。

    (※)以下の要件は撤廃
    「2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高がコロナ以前と比較して5%以上減少していること」
    (※)複数事業者が連携する場合は売上高減少分の合算が可能

  2. 事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営改新等支援機関と策定すること 等

【対象経費】

建物費(※)、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費(一部の経費については上限等の制限あり)
(※)移転に伴う一時的な貸工場等の賃借料についても建物費の一部として認める。

【補助上限額と補助率】

申請類型
補助上限額(※1)
補助率
最低賃金枠
(最低賃金引上げの影響を受け、
その原資の確保が困難な
特に状況の厳しい事業者に対する支援)
500万円、1,000万円、
1,500万円(※2)
中小3/4
中堅2/3
回復・再生応援枠
(引き続き状況が厳しい事業者や
事業再生に取り組む事業者に対する支援)
通常枠
2,000万円、4,000万円、
6,000万円、8,000円
(※2)
中小2/3
中堅1/2
(※3)
大規模賃金引上枠
(多くの従業員を雇用しながら、
継続的な賃金引上げに取り組むとともに、
従業員を増やして生産性を向上させる
事業者に対する支援)
1億円
グリーン成長枠
(研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら
グリーン成長戦略「実行計画」
14分野の課題の解決に資する取組を
行う事業者に対する支援)
中小1億円、中堅1.5億円
中小1/2
中堅1/3
スクロールできます

(※1)補助下限額は100万円 (※2)従業員規模により異なる (※3)6,000万円超は1/2(中小)、4,000万円超は1/3(中堅)

医療機器産業参入促進助成事業

東京都中小企業振興公社より公募されている補助金で、「東京都内のものづくり中小企業と医療機器製販企業等が連携し、医療機器製品等の開発または上市を目的とした取り組みであること」「臨床ニーズ(病院、診療所)に基づいた開発であること」が申請要件になります。医療機器産業参入促進事業には2つの種類があります。

医療機器産業参入促進助成事業 | 医療機器産業参入促進助成事業 | 東京都中小企業振興公社 (tokyo-kosha.or.jp)より引用

医療機器等事業化支援助成事業
開発から事業化までを対象とした助成金
医療機器等製品の開発から事業化を行う経費
募集要項 5,000万円
申請書 2/3
助成事業期間 最長5年間
対象経費 原材料・副資材費/機械装置・工具器具費/委託・外注費/産業財産権・導入費/技術指導受入費/PMDA相談料及び審査料/人件費/展示会出展費/広告費

医療機器等開発着手支援助成事業

東京都内ものづくり中小企業と医療機器製販企業等が連携または連携することを前提として、医療機器等製品を開発の初期段階のアイデア・構想の技術検証、初期試作に要する経費の一部を助成する制度です。

医療機器等開発着手支援助成事業
開発初期に利用できる助成金
医療機器等の開発初期段階における構想等の
事前検証や初期試作の経費
助成限度額 500万円
助成率 2/3
助成事業期間 最長1年間
対象経費 原材料・副資材費/委託・外注費

医療機器産業参入促進助成事業 | 医療機器産業参入促進助成事業 | 東京都中小企業振興公社 (tokyo-kosha.or.jp)より引用

医療機器として認められるもの

薬機法に規定された医療機器の定義によれば「医療機器とは、人もしくは動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、または人もしくは動物の身体の構もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く)であって、政令で定められているものをいう。薬機法第二条4項より引用」

薬機法では医療機器を「一般医療機器」「管理医療機器」「高度管理医療機器」の3つに分類しています。

不具合が起きた場合の人体へのリスクが最も高い「高度医療管理機器」の製造販売を行うためには厚生大臣の承認が必要です。一方、人体へのリスクが比較的低い「管理医療機器」では灯篭認証機関の認証のみで、人体へのリスクが極めて低いとされる「一般医療機器」では承認や認証がなくても製造が可能です。人体へのリスクに応じて医療機器に係る規制も異なってきます。

薬機法による医療機器の分類

名称 概要
一般医療機器  「不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低いと考えられるもの」と定義されています。

代表例:医療用ピンセット・体外診断医療機器・ガーゼ・脱脂綿・絆創膏・体温計・X線増感紙・歯科用印象材料など

製造販売の手続:PDMA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)への製造販売届

独立行政法人医薬品医療機器総合機構の資料を参照

管理医療機器

(クラスⅡ)

「不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが比較的低いと考えられるもの」と定義されています。

代表例:MRI・X線撮影装置・眼科用内視鏡・気管支カテール・超音波血流計・電子血圧計・歯科用金属など

製造販売の手続:第三者機関による認証

独立行政法人医薬品医療機器総合機構の資料を参照

高度管理医療機器

(クラスⅢ・クラスⅣ)

 「不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが比較的高いと考えられるもの(クラスⅢ)」「患者への侵襲性が高く、不具合が生じた場合、生命の危険に直結する恐れがあるもの(クラスⅣ)」と定義されています。

クラスⅢ代表例:透析器・人工骨・人工呼吸器・コンタクトレンズ・滅菌済み縫合糸など

製造販売の手続:PDMA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)による承認申請・厚生労働大臣による承認。

クラスⅣ代表例:植込型人工心臓・ペースメーカー・冠動脈ステント・大動脈ステント・グラフトなど。

製造販売の手続:PDMA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)による承認申請・厚生労働大臣による承認。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構の資料を参照

まとめ

今回は、医療機器に参入したい製造業、IT企業向けに「医療機器の定義」「医療機器の種類」「医療機器に参入できる補助金制度」についてご紹介しました。厚生労働省の「薬事工業生産動態統計」によると日本の医療機器市場は国内出荷ベースが約3兆円で、2009年から18年までの年平均成長率が約3%で成長しており、今後も伸び続けると思われます。医療機器の品目も30万以上であり、それぞれが細分化された市場なのでニッチな分野でも市場を早期に獲得できる可能性を秘めています。新型コロナウイルス感染症で売り上げが落ち込み、新たな市場で売り上げを安定的に確保したい製造業、IT企業の方は国や地方自治体の補助金制度を活用した医療機器産業参入を検討してみてはいかがでしょうか。

行政書士いからし経営法務事務所

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