目次
IT企業が第二種医療機器製造販売業許可を取得するには? 必要な手順とポイント
1. はじめに
近年、デジタルヘルスや医療ITの発展により、多くのIT企業が医療機器分野に進出しています。その中でも、「第二種医療機器製造販売業許可」を取得することで、医療機器の販売が可能になります。
本記事では、IT企業が第二種医療機器製造販売業許可を取得するための要件や手続き、注意点について解説します。
2. 第二種医療機器製造販売業許可とは?
2-1. 第二種医療機器とは
医療機器はリスクの程度に応じて分類されます。
- 第一種(高度管理医療機器):ペースメーカーや人工心肺装置など、高いリスクがあるもの
- 第二種(管理医療機器):MRI装置や超音波診断装置など、一定のリスクがあるもの
- 第三種(一般医療機器):聴診器や眼鏡など、比較的リスクが低いもの
IT企業が開発・販売することの多い「医療機器プログラム」(医療AIや診断支援ソフトなど)は、第二種医療機器に分類されることが多く、この許可を取得することで販売が可能になります。
2-2. 製造販売業とは
「製造販売業」とは、医療機器を市場に流通させる責任を持つ業者のことを指します。製造そのものは自社で行わず、他社に委託することも可能ですが、「販売する医療機器の品質・安全性を保証する責任」があります。
第二種医療機器製造販売業許可を取得すれば、自社で開発した医療機器プログラムを正式に販売できるようになります。
3. 許可取得の要件
3-1. 必要な組織体制
許可を取得するには、以下の3つの責任者を設置する必要があります。
- 総括製造販売責任者:全体の品質保証責任を持つ(一定の経験・資格が必要)
- 品質保証責任者:品質管理システム(QMS)を管理
- 安全管理責任者:販売後のリスク管理を担当(不具合報告など)
これらの責任者が適切に役割を果たせる体制を構築することが求められます。
3-2. QMS(品質マネジメントシステム)の構築
製造販売業者は、品質マネジメントシステム(QMS)を導入し、適切な管理体制を整えなければなりません。
- 医療機器の設計・製造・販売に関する手順書を作成
- 医療機器のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保
- 製造委託先の管理ルールを設定
ISO13485の取得が推奨されることも多く、事前に準備が必要です。
3-3. 許可申請に必要な書類
許可を取得するためには、以下の書類を準備し、管轄の地方厚生局に申請します。
- 申請書(様式第1)
- 会社概要(定款、登記簿謄本)
- 組織図および責任者の資格証明
- 品質マネジメントシステム(QMS)に関する書類
- 製造委託契約書(委託先がある場合)
審査には約2〜6か月かかるため、早めの準備が重要です。
4. 取得後の運用管理
4-1. 販売開始前のPMDA届出
許可を取得しても、販売前には医療機器ごとの承認・認証手続きが必要です。第二種医療機器の場合、PMDA(医薬品医療機器総合機構)への届出を行います。
4-2. GVP・QMS省令の遵守
医療機器の販売・運用にあたっては、以下の2つの規制を遵守する必要があります。
- GVP省令(Good Vigilance Practice):販売後の安全管理(不具合報告など)
- QMS省令(Quality Management System):製造販売業者の品質管理基準
特に医療機器プログラムはソフトウェアアップデート時の変更管理が重要視されるため、運用時の体制整備が求められます。
5. IT企業が医療機器業界に参入するメリット
5-1. 成長市場での新たなビジネス機会
デジタルヘルス市場は年々成長しており、医療AI、遠隔診療、ウェアラブルデバイスなどの分野は拡大傾向にあります。第二種医療機器製造販売業許可を取得することで、医療機器市場に正式に参入でき、新たな収益源を確保できます。
5-2. ヘルステック領域の競争優位性
IT企業の強みであるAI・データ解析技術を活用することで、従来の医療機器メーカーとの差別化が可能です。特に、**医療機器プログラム(SaMD:Software as a Medical Device)**は、今後の規制緩和によってさらなる市場拡大が期待されています。
6. まとめ
IT企業が第二種医療機器製造販売業許可を取得することで、医療機器市場に参入し、デジタルヘルス領域でのビジネス拡大が可能になります。
取得のポイント
- 必要な責任者を配置し、組織体制を整備
- QMS(品質マネジメントシステム)を導入
- PMDA届出やGVP・QMS省令の遵守を徹底
医療機器市場は規制が厳しい反面、競争力のあるプロダクトが開発できれば大きな成長が見込める分野です。IT企業がこの許可を取得することで、医療業界における新たな可能性が広がります。