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開発許可が絡む相続不動産とは? ― 相続後に「売れない」「使えない」原因を実務目線で解説 ―

開発許可が絡む相続不動産とは? ― 相続後に「売れない」「使えない」原因を実務目線で解説 ―

 相続によって土地を取得したものの、

・不動産業者に「この土地は扱えない」と言われた

・建物を建てられないと説明された

・農地転用はできそうなのに、話が進まない

こうしたケースでは、都市計画法の「開発許可」が関係していることが少なくありません。相続不動産の中には、農地法だけでなく、開発許可の可否が売却や活用の前提になる土地が存在します。

本記事では、相続不動産に開発許可が絡む典型的なケースと、実務上の注意点を整理します。

開発許可とは何か(相続不動産との関係)

【開発許可の概要】

都市計画法に基づき、「建物の建築を目的として」「土地の区画形質を変更する行為(造成等)」を行う場合に必要となる許可です。相続しただけでは不要ですが、「使う」「売る」「造成する」段階で問題になります。

相続不動産で開発許可が問題になる典型例

ケース① 市街化調整区域の土地を相続した場合

相続不動産で最も多いのがこのケースです。

・親の代では普通に使っていた

・建物も昔から建っている

・しかし現在は市街化調整区域

この場合、「新たな建築」「建替え」「用途変更」「宅地造成を伴う売却」には、開発許可が必要になる可能性があります。

ケース② 農地転用は可能でも造成が必要な土地

・農地転用自体は可能(第2種・第3種農地)

・かし宅地として売るには「盛土」「排水整備」「道路付け」が必要

この場合、農地法の許可だけでは足りず、開発許可が必要になります。相続人が「転用できる=売れる」と誤解しやすいポイントです。

ケース③ 分筆・区画整理を伴う売却

相続後、「広い土地を分けて売りたい」「複数区画の宅地として売却したい」という場合も、開発行為に該当し、開発許可が必要となるケースがあります。

農地転用と開発許可の関係(相続案件)

相続した土地を宅地として売却したり、建物を建てて活用したりする場合は、次の手続がすべてクリアできてはじめて話が前に進みます。

・農地を農地以外にできるか(農地転用)

・土地を造成・区画できるか(開発許可)

・建物を建てられるか(建築の可否)

これらはどれか一つだけ取れればよい、というものではありません。たとえば、農地転用が認められても、開発許可が取れなければ宅地造成ができず、土地は売れません。開発許可が可能でも、農地転用ができなければ建物を建てることができません。両方そろっていても、建築できない土地であれば、買い手はつきません。

このように、農地転用・開発許可・建築可否のうち、どれか一つでも認められないと、最終的な売却や活用ができなくなります。

そのため、相続不動産ではこれらをまとめて確認することが重要になります。

相続後に多い誤解

誤解①「昔から建物がある土地だから問題ない」

現在の法規制で判断されます。過去に合法でも、相続後の建替えや売却では現行法が適用されます。

誤解②「開発許可は業者が取るもの」

売却前提でも、可否の整理は相続人側で必要になります。買主が開発許可を取得する場合でも、「そもそも許可が下りる土地か」「条件付きでしか進められないか」を整理しないと、契約自体が成立しません。

相続不動産で開発許可が絡む場合の実務フロー

  1. 相続登記・名義整理
  2. 都市計画区域・用途地域の確認
  3. 開発許可の要否確認
  4. 農地転用・他法令との関係整理
  5. 事前協議(自治体)
  6. 売却・活用方針決定

売却活動の前に④まで終わっているかが重要です。

専門家に相談すべきタイミング

次のような場合は、早期相談が不可欠です。

・市街化調整区域の土地を相続した

・農地転用はできそうだが売れない

・不動産会社が慎重な姿勢を取っている

・建替え・造成・分筆を考えている

相続不動産において、開発許可は「最後の手続」ではなく「最初の判断材料」になります。

まとめ

・相続不動産でも、開発許可が必要になるケースは多い

・特に「市街化調整区域」「農地転用+造成」「分筆を伴う売却」では要注意

・農地法だけでなく、都市計画法の整理が不可欠

相続した不動産を「売れる・使える状態」にするためには、開発許可の可否を含めた事前整理が、結果的に最短ルートになります。