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補助金申請で不動産購入や賃料は対象経費になる?採択後の交付申請で注意すべきポイントを実務目線で解説
補助金制度における「対象経費」の基本構造
補助金は「事業に必要な支出なら何でも出る」仕組みではありません。制度上、対象経費は次のような観点で線引きされます。
- 補助事業の実施に直接必要か(代替可能・恒常的費用は厳しい)
- 成果物と明確に結びつくか(投資の結果、何が残るか)
- 補助金の趣旨に合致するか(政策目的:生産性向上、事業転換、成長投資など)
- 資産形成・投機性が強くないか(転売可能・価値が残りやすいものは厳しい)
- 証憑で確認できるか(契約・発注・納品・検収・支払の整合)
不動産購入や賃料は、まさにこの線引きが最も厳しく出る領域です。
土地取得費が「原則対象外」になりやすい理由
多くの補助金で、土地取得費は実務上かなり厳しく扱われます。理由はシンプルです。
土地は事業以外にも転用できる
土地は用途変更や賃貸、売却が比較的容易で、補助事業との一体性を説明しにくい傾向があります。
資産価値が残りやすく、投機性が問題視されやすい
補助金は政策目的の達成が主眼であり、資産形成そのものを支援する制度ではありません。土地は価値が残りやすく、制度趣旨と衝突しやすい典型です。
「成果物」との因果関係が弱い
設備導入や改修は、事業成果(生産能力、売上拡大、提供価値)とつながりやすい一方、土地購入は説明が難しいケースが多いです。
実務のポイント
土地取得を補助金の中核に置く設計は、採択後に崩れやすいので、最初から「自己資金・融資で賄う前提」で組み立てる方が安全です。
建物取得費は「条件付き」で扱いが分かれる
土地と違い、建物は制度によっては対象経費に整理されることがあります。特に「成長投資」「拠点整備」「生産施設」などの政策目的と噛み合う場合です。
ただし、ここで最重要なのは次の一点です。
建物でも “単なる購入” や “賃貸”、そして “土地代” は対象外と明記されることがある
たとえば、公募要領の経費区分の注記として、土地代や建物の単なる購入・賃貸は対象外と整理される例があります 。
つまり、「建物なら何でもOK」ではなく、補助事業との一体性が強い“投資”として説明できるかが勝負になります。
「建物取得」と「建物改修」を混同しない
実務で多い失敗がこれです。
- 建物取得費:制度限定・条件付き(対象外の制度も多い)
- 建物改修費:比較的対象になりやすい(内装、用途対応工事、設備導入に伴う工事など)
同じ“建物”でも、経費区分が違うと扱いが変わります。見積書や契約書の科目の切り方で判断が分かれることもあるため、早期に整理が必要です。
賃料(家賃)が補助対象になりにくい理由
「購入がダメなら賃料で…」と考える方は多いのですが、賃料は多くの制度で原則対象外になりやすいです。理由は次の通りです。
- 継続的に発生する固定費であり、補助事業の“投資成果”として整理しづらい
- 補助期間終了後も発生し続けるため、公的支援の設計と相性が悪い
- 成果物との直接因果が弱い(何を得たかを説明しにくい)
また、制度によっては「建物の賃貸」自体を対象外として注記している例もあります 。
このため、賃料を入れる場合は「対象外経費として自己負担で賄う」設計が現実的です。
一番危ないのは「採択後の交付申請」:なぜ採択後に経費が落ちるのか
補助金は、一般に次の二段階構造で動きます。
- 公募申請(審査・採択):事業計画の方向性、成長性、実現可能性の評価
- 交付申請・交付決定(経費精査):経費区分・証憑・要領適合の厳密チェック
このため、採択されても「そのまま全額が通る」とは限りません。
実際に、公募要領等で 採択後に交付申請で精査し、減額や全額対象外もあり得る旨が明確に注意喚起されています 。
さらに、採択=経費の保証ではなく、最終的には確定検査で補助金額が確定する、という整理も示されています 。
採択後に起こりがちな典型例
- 事業計画の中心が「土地購入」になっていて、交付申請で外れて資金計画が崩壊
- 建物取得費として計上したが、「単なる購入」「賃貸扱い」と判断され否認
- 見積の内訳が粗く、建物・構築物・外構・土地造成などが混在し、対象外が多発
- 契約・発注のタイミングが交付決定前で、対象期間外として否認(制度ごとに要確認)
交付申請を見据えた「事業計画の組み立て方」:崩れない設計のコツ
不動産関連費用が絡む案件は、次の発想で組み立てると事故率が下がります。
対象経費と対象外経費を最初から分ける
- 対象経費:設備、改修、システム、外注など(制度に沿う形で)
- 対象外経費:土地代、賃料、移転費、運転資金など(自己資金・融資で設計)
「対象外をどう補うか」を最初に設計できると、交付申請で削られても計画が死にません。
見積書の内訳を“経費区分に合わせて”作る
不動産関連は、見積の粒度が粗いと高確率で揉めます。
建物・改修・付帯工事・外構・構築物・造成・設備を、制度上の区分に寄せて分解できるかが重要です。
「専ら補助事業に使用」を説明できるようにする
建物・設備は「他用途にも使える」と見られるほど不利になります。
用途、稼働計画、面積按分、導線、保管場所、利用者、管理体制を言語化しておくのが実務上有効です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 建物はOKで土地はNG、という理解で合っていますか?
概ねその整理が出やすいですが、建物も制度限定・条件付きです。制度によっては、土地代は対象外、建物でも単なる購入や賃貸は対象外と注記されます 。
Q2. 採択されたのに経費が通らないのはなぜ?
採択は「方向性の評価」で、交付申請は「経費の適否の精査」です。採択後に交付申請で精査し、減額や全額対象外もあり得る旨は要領上も注意されています 。
Q3. 家賃が対象になる補助金はありますか?
制度によって例外はあり得ますが、一般論として賃料は対象外になりやすいです。少なくとも制度によっては「賃貸は対象外」と明確に整理されています 。必ず公募要領・交付要綱で確認してください。
Q4. 「土地造成」や「外構」はどう扱われますか?
制度によって扱いが分かれます。たとえば建物費の注記で、対象範囲に「付帯工事(土地造成含む)」を入れつつ、構築物等は対象外とするなど、線引きが細かい例があります 。内訳分解と根拠整理が重要です。
まとめ ゴールは「採択」ではなく「交付申請を通して完了すること」
- 土地取得費は原則対象外になりやすい
- 建物取得費は制度限定・条件付き。制度によっては「単なる購入」「賃貸」「土地代」は対象外と明記
- 賃料(家賃)は原則対象外になりやすい
- 実務の落とし穴は、採択後の交付申請で顕在化する。採択後に精査され、減額・対象外もあり得る
- 申請前から「対象経費/対象外経費」を分け、資金計画を二重構造で作ることが成功確度を上げる
※本記事は、補助金申請における不動産購入費・賃料の一般的な考え方を整理したものであり、個別制度・個別案件の可否を断定するものではありません。最終判断は各補助金の公募要領・交付要綱・運用によって異なります。