経営革新計画とは?承認申請の手続きも解説

補助金を活用して設備投資を検討している事業者の方が増えています。「ものづくり補助金」の公募要領に「審査加点に希望する場合に必要な追加書類」の項目があります。その中で成長性加点に「経営革新計画承認書(当該項目の写しを含む)」という記載がされています。

ものづくり補助金の申請時に成長性加点があると審査で経営革新計画の承認申請を受けていない事業者よりも優遇されるため、採択される可能性も高くなります。成長性加点のために必要な「経営革新計画って何?」と疑問に思う事業者の方も多いと思います。今回は、「経営革新計画とは?」と「承認申請の手続き」についても解説したいと思います。

経営革新計画とは新規事業に取り組む計画

経営革新計画とは、定められた2点の経営指標を超えることを目的に策定した、新規事業の計画のことです。定められた経営指標は、経営革新計画では「経営の相当程度の向上」と表現されます。

【「経営の想定程度の向上」に必要な経営指標の向上率】

①付加価値額または一人当たりの付加価値額 ②給与支給総額
3年計画 9%以上 4.5%以上
4年計画 12%以上 6%以上
5年計画 15%以上 7.5%以上

経営革新計画の策定の効果は、自社の現状の課題や目標、目標達成の道筋が明確になる等があります。ほかにも、経営革新計画を都道府県へ提出し、承認された企業には、経営革新計画の実行に向け様々な支援策が用意されています。

経営革新計画における「新事業活動」は5つの分類いずれかに該当するもの

経営革新計画における「新事業活動」には5つの分類のいずれかに該当するものを指します。

  1. 新商品の開発又は生産
  2. 新役務の開発又は提供
  3. 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
  4. 役務の新たな提供の方式の導入
  5. 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動

また、経営革新計画は、5つの「新事業活動」の取組に対して「経営の相当程度の向上」を図る計画である必要があります。

なお、経営革新計画として承認されるためには、事業期間である3~5年終了時における付加価値額と給与支給総額の指標の伸び率がどの程度かがポイントになります。

経営革新計画の申請は3つの条件に該当している必要がある

経営革新計画の申請をする事業者は、3つの条件に該当している必要があります。

  1. 直近1年間の事業実績があり、この期間内に決算を行っている事業者
  2. 申請する都道府県に本店登記(個人事業主の場合は、住民登録)している事業者
  3. 下記表の資本金基準または従業員数のいずれか一方を満たす方

【申請出来る中小企業の一覧表】

主たる事業を営んでいる業種 資本金基準

(資本金の額又は出資金の総額)

従業員基準

(常時使用する従業員の数)

製造業・建設業・運輸業・その他の業種 下記以外 3億円以下 300人以下
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに造業並びに工業用ベルトを除く)  

 

3億円以下

 

 

900人以下

卸売業 1億円以下 100人以下
 

サービス業

下記以外 5,000万円以下 100人以下
ソフトウェア業又は情報サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下
小売業(飲食業含む) 5,000万円以下 50人以下

経営革新計画が承認されると支援措置を受けられる

経営革新計画は、申請した都道府県で承認されると8種類の支援措置を受けることができます。

  • 申請した都道府県で承認されると受けられる支援策
  • 日本政策金融公庫において経営革新計画に基づく設備資金及び運転資金の金利面の優遇
  • 信用保証協会の融資における信用保証枠の拡大

①金融機関から借入れる資金の保証限度額の別枠設定

②新事業開拓保証の対象となるもの(研究開発費用)の保証限度額の引き上げ

  • 中小企業投資育成株式会社からの投資
  • 起業支援ファンドからの投資
  • 海外展開事業者への支援制度

①スタンドバイ・クレジット(債務の保証と同様の目的のために発行される信用状)制度(日本公庫法の特例)

②海外投資関連保険(中小企業信用保険法の特例)

  • 特許関係料(審査請求料・特許料)の減免
  • ものづくり補助金・事業承継・引継ぎ補助金の申請時の審査加点措置
  • 経営革新計画の承認企業に雇用されている外国人の高度人材ビザ申請のポイント加算

承認申請手続の流れ

経営革新計画の承認を受けるための手続きについては以下のような流れになります。

①申請する都道府県担当窓口に問い合わせ

経営革新計画に申請要件に該当するか、計画内容の新規性、革新性、申請窓口の確認、申請手続きの内容等について確認するようにしましょう。経営革新計画の承認されることで受けられる支援策も申請する都道府県独自の支援策もあるので確認してみてください。複数の中小企業が共同で経営革新計画を作成する場合、申請代表者、実施主体の構成によっては、都道府県ではなく、国の地方機関や本省が窓口になることもありますので確認するようにして下さい。

②経営革新計画書の作成

経営革新計画における新規事業の具体的な内容、既存事業の違い、競合他社との違いや売上、数値計画などを経営革新計画の承認申請書に記入します。承認申請書については、都道府県担当部局、国の地方機関等のWEBサイトからダウンロードが可能です。申請先の様式に従って記入するようにしてください。

③添付書類の準備

■法人の場合

  • 直近2期分の確定申告書類一式の写し(決算書・勘定科目内訳明細書含む、税務署受付済みのもの)
  • 発行から3ヶ月以内の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書) ※コピーも可能
  • 定款の写し

■個人事業主の場合

  • 発行から3ヶ月以内の住民票
  • 直近2期分のの確定申告書類一式の写し(決算書・税務署受付済みのもの)

④都道府県の担当窓口に事前予約

申請書の記入、事業計画のアドバイスを受け、随時、計画書の修正が求められます。

⑤事前相談機関を通じて必要書類を各都道府県に申請

東京都の場合、東京都産業労働局 商工部 経営支援課・東京商工会議所・商工会・東京中小企業振興公社を通じて申請します。

⑥審査会での審査

審査に約1~2ヶ月かかります。原則、書面での審査になりますが都道府県によっては申請企業が審査会に出席してプレゼンテーションを求められる場合があります。山梨県は申請企業の審査会出席が求められます。

⑦承認・不承認

申請した都道府県から承認、不承認の結果通知されます。

経営革新計画の計画策定は専門家に依頼できる

自社で経営革新計画を策定しようと思っても経営革新計画を承認するための基準があり難易度が高いものになります。新規事業の具体的な内容だけでなく、売上、利益の数値計画等の財務知識も必要になります。

経営革新計画の策定経験のある中小企業庁の認定経営革新等支援機関である行政書士、公認会計士、税理士、中小企業診断士などの士業や商工会議所・商工会・金融機関等に常駐している専門家に依頼すると適切なアドバイスを得ることが可能になります。

まとめ

今回は、経営革新計画についてまとめてみました。近年、事業再構築補助金やものづくり補助金等の補助金を活用して設備投資をして新たに新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編を図ることを検討されている事業者も多いかと思います。

経営革新計画で策定した計画は補助金、融資を受ける際に求められる事業計画書作成にも生かせるものです。補助金、融資を受ける場合に経営革新計画の承認を受けた企業は有利になり、都道府県が認定した事業計画として対外的にもアピールに繋がると思います。

自社で「新規事業活動」を行うことを検討している事業者の方は、当事務所にお問い合わせ頂ければと思います。