経営革新計画の書き方について

経営革新計画の書き方を解説

今回は、経営革新計画の書き方、ポイントについてご紹介致します。

自社で新商品の開発、サービス提供を考えた際に「経営革新計画」を策定して本社所在地の都道府県の承認を受けることで、様々な支援策を受けることが出来ます。自社で「新規事業」を検討されている方で「経営革新計画」の承認を受けたいと考えている方は参考にしてみてください。

経営革新計画の記載内容について

申請する都道府県のフォーマットによってことなりますが、一般的に経営革新計画の記載する項目は次の7つがあります。

①会社の名称・所在地・資本金・法人番号・業種を記載

②経営革新計画のテーマ・概略・実施体制

③会社概要・自社の課題・経営状況

④経営革新計画を作成しようと思ったきかっけ

⑤経営革新計画の事業計画の詳細・既存事業と新規事業の比較・競合他社との比較

⑥経営革新計画の数値目標、設備投資内容

⑦経営革新計画の承認で受けたい支援策

基本的には、経営革新計画を提出する窓口でアドバイスを受けながら計画書を策定します。

策定した計画書は月1度の審査会で審査され、承認まで約2ヶ月程度かかります。

都道府県によってはこの審査会に自社の担当者の出席を求められて審査員の前でプレゼンテーションをすることを求められます。

例えば、山梨県では審査会に出席して説明を求められます。説明した後に、審査員からの質疑応答、業界に精通した審査員の方から事業に対するアドバイスを受けることが出来ます。

審査員が申請者側を圧迫するような対応することはないので平常心で挑めば問題ありません。

①会社の名称・所在地・資本金・法人番号・業種を記載

本社所在地の都道府県の受付を行っているサイトで経営革新計画の書式があるので、書式をダウンロードして、法人の場合は商業登記簿、個人事業主の場合は住民票に記載されている所在地を記載します。法人の場合、法人の名称、法人番号(国税庁法人番号公表サイトに公表されている法人番号または確定申告書に記載のある法人番号)、資本金、業種(「日本標準産業分類」に基づき、該当する業種、番号を記載)を記載します。

②経営革新計画のテーマ・概略・実施体制

経営革新計画について、「新規事業」で何をやるかを決めて、経営革新計画のテーマと概略、計画期間を記載します。経営革新計画における「新事業活動」には5つのうちのいづれかに該当する必要があり、事業活動の類型という箇所にも計画対象となる類型全てに記載をします。それと計画を実施する上での社内の実施体制、外部の連携先について簡潔に記載していきます。

① 新商品の開発又は生産

② 新役務の開発又は提供

③ 商品の新たな生産又は販売の方式の導入

④ 役務の新たな提供の方式の導入

⑤ 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動

③会社概要・自社の課題・経営状況

会社概要については、自社のホームページ、会社案内のパンフレットに記載のあるものを参考にして、「会社設立年月日、従業員数(役員は除く)、会社沿革、事業内容(事業別の売上構成比)、顧客、仕入先、競合先、取得されている資格、許可、自社の強みを記載していきます。

「自社の強みは何ですか?」と質問すると、すぐに返答できない事業者の方も多いですが、強みのない会社はないです。今まで事業を継続して実績を上げてきたわけですから、「貴社が得意としていること」「顧客から好評をいただいていること」などを考えればたくさん出てくるはずです。

自社にとっては当たり前のことも、外部の人間から見たら優れていることや他社では出来ない商品、サービスもありますので、都道府県の相談窓口、認定経営革新等支援機関などに相談して客観的な立場からアドバイスをもらうのも良いと思います。

それと、経営状況においては原則、直近3年分の決算書の提出が求められますので、直近3期の売上高、営業利益、営業外費用、経営状況について表などを用いて見やすいように記載すれば問題ありません。

④経営革新計画を作成しようと思ったきかっけ

近年であれば新型コロナウイルス感染症拡大などの外部的な要因をきっかけに既存事業が伸び悩み等で新たな販路拡大のために事業を取り組もうと考えている方も多いはずです。

外部的な要因だけでなく、内部における人手不足の影響で新た設備投資をきっかけに新たな商品開発やサービスに取組もうと考えた方もいるかと思います。内部的な要因、外部的な要因を総合的に考慮して記載するようにしましょう。

⑤経営革新計画の事業計画の詳細・既存事業と新規事業の比較・競合他社との比較

経営革新計画の事業計画の詳細には、既存事業と新規事業の違いについて記載します。既存事業との違いを比較する場合、①商品・サービス内容や②商流・販路、③生産・開発についてそれぞれの違いを記載していくとわかりやすくなります。

経営革新計画の事業を行っていく上で、実現可能性があるか図を用いて市場動向を記載して、自社が参入を検討している事業における競合他社の動向を3社程度比較して、サービス内容、価格などを優劣がわかるように記載すると審査側にもわかりやすくなります。

あと、注意点としては、業界で利用する専門用語に関しては素人が見てもわかりやすいように説明書きを入れると良いでしょう。審査員も業界に精通している人ばかりではないので、初めての人でもわかるようにすることで審査側の心象も良くなると思います。

⑥経営革新計画の数値目標、設備投資内容

次に経営革新計画の数値目標として下記内容を達成するための数値計画を記載します。

この5つの「新事業活動」の取組に対して「経営の相当程度の向上」を図る計画が必要になります。「経営の相当程度の向上」とは、以下の①②の両方の経営の指標が下記の向上率を超える設定で、経営計画を策定することが必要になります。

①付加価値額又は一人当たりの付加価値額の伸び率

②給与総支給額の伸び率

①付加価値額または一人当たりの付加価値額 ②給与支給総額
3年計画 9%以上 4.5%以上
4年計画 12%以上 6%以上
5年計画 15%以上 7.5%以上

経営革新計画として承認されるためには、事業期間である3~5年終了時における付加価値額と給与支給総額の指標の伸び率がポイントになります。

都道府県の経営革新計画のサイトにエクセルの数値計画表をダウンロードして数値を入力していきます。損益計算書になっていて、売上、販売管理費、従業員の給与総支給額、人件費、減価償却費、設備投資金額、運転資金などを入力していきます。

⑦経営革新計画の承認で受けたい支援策

経営革新計画の承認を受けると様々な支援策が利用できるようになります。新規事業を進める上で必要に応じて利用するのが良いと思います。

①政府系金融機関である「株式会社日本政策金融公庫」において経営革新計画に基づく設備資金及び運転資金について、金利面などで優遇

②信用保証枠の特例

普通保証等に加えて、保証限度枠の別枠設定で金融機関から借入れる資金の借入が可能。

③中小企業投資育成株式会社からの投資

④起業支援ファンドからの投資

⑤海外展開事業者への支援制度

⑥海外投資関係保険(中小企業信用保険法の特例)

⑦特許関係料(審査請求料・特許料)の減免

⑧ものづくり補助金・事業承継・引継ぎ補助金の申請時の加点措置、助成金(東京都の場合:市場開拓助成事業)の申請資格の取得

⑨中小企業総合展(新価値創造展)出展募集時の優遇措置

⑩企業に勤めている外国人の人材の高度人材ビザ申請時のポイント加算

まとめ

今回は経営革新計画の書き方について解説しました。特に経営革新計画の事業内容については、市場動向、他社の価格調査、機能面などを調査して、これらを根拠に理由付けしして計画書に記載していく必要があります。

これは、経営革新計画だけに限らず、事業計画全般に言えることですが、社会人として経験してきた人であれば、上司から数値目標を与えられ、「いつ」「どこで」「なにを」「どのように」「どうやって」やっていくのかを会議等で説明する機会もあると思うので、上司からの数値目標に対して、対策を説明していくのと事業計画書も根本的には変わりありません。

結局のところ、新規事業をやっていく上での根拠と理由付けをしっかりやっておけば経営革新計画の承認も受けやすいと思います。

都道府県においても企業に「経営革新計画」の承認を受けてもらうために、計画書の修正を何度か求められることもありますので、指示に従って修正しくことによって、経営革新計画の承認に近づくと思います。今回、解説した内容を参考にして経営革新計画の策定を行ってみてください。