要件が拡大された経営革新計画の申請対象を解説

資本金基準が撤廃された経営革新計画

経営革新計画の申請となる企業について資本金の基準が撤廃され、従業員数が引き上げられました。今まで申請できなかった企業も経営革新計画の申請が出来るようになります。

今回は、経営革新計画の申請対象の要件がどう変わったかについてご紹介致します。

2023年3月31日までは従来の要件が対象となる

従来の経営革新計画の対象となる要件は、下記表の資本金基準又は従業員基準のいずれかに該当する会社及び個人が対象でした。従来の基準での経営革新計画の申請は2023年3月31日までの期間は対象となります。

中小企業庁「2022年度版経営革新計画進め方ガイドブック」より引用

業種別にみた経営革新計画の申請対象について

2023年3月31日以降は、資本金基準が撤廃されて従業員数が引き上げられることになりました。

中小企業庁「2022年度版経営革新計画進め方ガイドブックより引用

資本金基準と従業員基準の両方が上回っていた企業も経営革新計画申請対象となったことで、経営革新計画承認によりメリットが受けられる企業が増えることになります。

業種別に見た経営革新計画の申請対象について

ここでは業種別に経営革新計画の「申請対象についてみていきたいと思います。

製造業

製造業は従業員数が300人以上から500人以上に引き上げられました。たたし、ゴム製品製造業(自動車又は航空機タイヤ及びチューブ製造並びに工業用ゴム製造業を除く)は、資本金基準3億円以下又は従業員基準900人以下という基準でしたが、今回の申請対象の変更により資本金3億円を超え又は従業員数500人を超える事業者は対象外になります。

現行の要件は満たすが、新しい要件になると申請対象外になる方は2023年3月31日までに申請することをおすすめします。

卸売業

卸売業については、資本金基準1億円以下又は従業員100人以下という要件から資本金基準枠が撤廃された、従業員数400人以下の事業者は経営革新計画の対象となります。卸売業に関しては今回の申請対象の要件拡大において申請対象事業者が増えると思われます。

サービス業

サービス業は、現行では以下のような資本金基準又従業員基準の事業者が対象でした。

中小企業庁「2022年度版経営革新計画進め方ガイドブックより引用

今回の改正により資本金基準が撤廃され、従業員数300人以下の事業者が対象となったことによりサービス業の経営革新計画の申請対象の事業者が増える可能性があります。ただし、「ソフトウェア業又は情報処理サービス業」「旅館業」に関しては従来のサービス業の300人以下ではなく「製造業等」に分類され500人以下が対象になります。

ソフトウェア業又は情報処理サービス業

従来は資本金基準3億円以下又は、従業員基準300人以下の事業者が申請対象でした。「ソフトウェア業又は情報サービス業は従業員数300人以下のサービス業に該当するのでは?」と思われる方もいると思います。

中小企業庁の技術経営革新課に問い合わせたところ「ソフトウェア業又は情報処理サービス業」は「製造業等」に該当し従業員数500人以下であれば申請対象になります。都道府県によって経営革新計画の対象事業者の要件をわかりやすく表でまとめているところがありますので、神奈川県の資料を下記に引用しました。

神奈川県「経営革新計画の承認手続きと支援メニューのご案内」経営革新計画の承認手続と支援策のご案内 – 神奈川県ホームページ (pref.kanagawa.jp)

経営革新計画は「中小企業等経営強化法」という法律で新商品やサービスの開発、新たな販売方式などの中小企業の新たな取組みを本店所在地の登記がある都道府県に承認を受けると様々な支援策を受けることができます。申請する都道府県は違っても対象企業は「中小企業等経営強化法」に規定に従っており都道府県によって申請対象企業が違うということはりません。

従業員基準の拡大により「ソフトウェア業又は情報処理サービス業」の申請が増えていくと思います。日本は先進国の中でもIT技術力が遅れているといわれており、近年は企業のDX化の推進が課題となっており、IT人材が不足しているのが現状です。外国人のIT技術者を日本で就業させる際に必要な高度人材専門職のポイント加算措置も適用されるためIT人材を日本に呼び込むこともできます。それ以外にも経営革新計画承認によって融資の優遇、補助金審査の優遇、特許の減免措置など事業拡大を行う上でとても有益な支援を受けることができるようになります。

旅館業

旅館業も「ソフトウェア業又は情報処理サービス業」と同様に「製造業等」の従業員数500人以下の事業者であれば経営革新計画の対象になります。

小売業

従来、小売業は資本金基準5千万円以下又は従業員数基準50人以下でしたが資本金基準の撤廃により従業員数300人以下であれば経営革新計画の申請対象になります。

みなし大企業は経営革新計画の申請できる

「資本金基準が撤廃され、従業員基準が引き上げられたけど当社はみなし大企業だから申請できなのでは?」という質問を受けたことがあります。

「みなし大企業」とは、企業の事業規模は中小企業であるが、実質的に大企業が株主で支配されている企業のことです。租税特別措置法等により範囲が定められています。資本金または出資金が1億円以下の法人のうちいずれかに該当する法人は「みなし大企業」とされています。

  1. その発行済株式または出資の総数または総額の1/2以上を同一の「大規模法人」に所有されている法人
  2. その発行済株式または出資の総数または総額の2/3以上を複数の「大規模法人」に所有されている法人

租税特別措置法より条文を引用

経営革新計画は中小企業等経営強化法によって定められていますが、みなし大企業に関する規定はありません。そのため、業種別の従業員数の要件を満たせば、みなし大企業であっても経営革新計画に申請することができます。

資本金基準の撤廃と従業員基準の引き上げにより経営革新計画対象にならなくなる企業はどうすれば良いか?

現行の経営革新計画の対象では「資本金の基準は超えていないけど、従業員数は基準をみたしていた」「資本金の基準は超えていたけど従業員数の基準は満たしていた」など経営革新計画の対象とならなくなるケースがあります。

特に製造業においては、ゴム製品製造業(自動車又は航空機タイヤ及びチューブ製造並びに工業用ゴム製造業を除く)は資本金基準3億円以下又は従業員基準900人以下という基準が、今回の申請対象の変更により資本金3億円を超え又は従業員数500人を超える事業者は対象外になるケースがあります。

このようなケースの場合、2023年3月31日までの期間は経営革新計画の対象となりますので早めの申請をおすすめします。

まとめ

今回、経営革新計画の申請対象の拡大についてまとめてみました。今回の資本金基準の撤廃と従業員数の基準引き上げにより今まで「経営革新計画の対象だったけど対象外になった事業者」と「今まで経営革新計画の対象でなかったけど申請できるようになった事業者」と2つに分かれる形になりました。

基本的には従来の経営革新計画対象事業者よりも規模の大きい事業者が申請できるようになったという意味では経営革新計画の承認によってメリットを受けられる企業が増えていくと思われます。また、税法上では「みなし大企業」でも経営革新計画では中小企業等経営強化法の基準を満たせば経営革新計画の申請が可能になります。

特に300人以上500人以下の「ソフトウェア業又は情報サービス業」の事業者は従業員数の基準の引き上げにより経営革新計画の対象企業増えると思われます。「ソフトウェア業又は情報サービス業」は新商品、新サービスの開発を行う上で経営革新計画の承認を受けることで融資、補助金、特許料減免などの優遇措置を受けることができます。また、経営革新計画の承認企業は高度専門職としてポイント加算措置もあるため、IT技術が進んでいる外国から優秀なエンジニアを招くことも可能になります。経営革新計画の対象企業の拡大によって申請できるようになった事業者の方は検討してみてはいかがでしょうか。