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経営革新計画の承認事例について~IT企業の医療機器参入~
はじめに
近年、デジタル技術の進化により、IT企業の役割はますます広がっています。特に、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が加速し、企業の業務効率化や新たなビジネスモデルの確立が求められています。
そのような中で、多くのIT企業が競争の激しい「受託開発ソフトウェア業」や「SES事業」から脱却し、新しい事業領域に進出しようとしています。その一つが 医療向けシステム開発 です。
本記事では、IT企業が医療向けシステムを開発し、経営革新計画の承認を受けた事例 をご紹介し、成功のポイントを解説します。
IT企業の課題と医療分野への進出の背景
現在、IT業界では以下のような課題を抱えています。
- 競争の激化:新規参入企業が増加し、価格競争が激化
- 景気の影響を受けやすい:受託開発やSES事業は景気や元請企業の業績に左右される
- ITエンジニア不足:経済産業省の試算では2030年までに約79万人が不足
これらの課題を解決するために、多くのIT企業が 安定した需要のある医療分野 への進出を検討しています。医療業界は、景気の影響を受けにくく、公的資金による支援が充実している という特長があり、新規参入の魅力が高いのです。
では、具体的にどのような事例があるのでしょうか?
事例1:AI歯科診断システムの開発
企業概要
- 創業2年目のIT企業(東京都)
- 事業内容:SIer企業向けのシステム開発支援、クラウド設計・構築、導入支援
- 課題:下請け業務が中心で、景気や取引先の経営状況に左右されやすい
医療向けシステム開発のきっかけ
この企業は、景気に左右されない事業を確立するために、医療分野への参入を決意。特に 歯科診療の分野 に注目しました。
その理由は以下の通りです。
- 歯の健康は全身の健康と直結 しており、診断技術の向上が求められている
- 歯科医院は全国に約6万8千件 あり、市場規模が大きい
- AI技術を活用した診断システム により、診療の精度向上や業務の効率化が期待できる
さらに、過去に歯科診断システムを開発した経験を持つエンジニアが在籍していた ため、開発のスムーズな進行が可能と判断しました。
医療機器の許認可と対応
AI歯科診断システムの開発にあたり、東京都の健康安全研究センターに確認したところ、本システムは「プログラム医療機器」に該当 することが判明しました。
「プログラム医療機器」とは、医療機器法(医薬品医療機器等法)に基づき、診断・治療・予防を目的としたソフトウェアのことを指します。そのため、「医療機器製造業登録」「第二種医療機器製造販売業許可取得」「医療機器の認証」が必要 となりました。
経営革新計画の承認とその効果
この企業は、経営革新計画に以下の内容を記載し、承認を取得 しました。
- 新商品の開発(AI歯科診断システム)
- 医療機器の許認可取得の計画
- 市場拡大のためのビジネスモデル
経営革新計画の承認により、以下の支援を受けることができました。
✅ 政府系金融機関による低金利融資
✅ 中小企業信用保険法の特例(東京都制度融資)
✅ 補助金申請の優遇措置
現在、この企業は某歯科医療機関と共同開発を進めており、新規事業の成功に向けて前進しています。
事例2:RFIDを活用した医療向け血液管理システムの開発
企業概要
- 創業26年目のIT企業(東京都)
- 事業内容:SES事業(8割)、システム開発請負、自社商品開発
- 課題:営業利益の黒字化、新たな販路の開拓
開発の背景
この企業は、自社事業の柱を強化するため、RFID(無線通信技術)を活用した血液管理システムの開発 に着手しました。
RFIDは、医療現場の作業負担軽減や医療過誤の防止に役立つ技術 であり、近年、医療・医薬の分野でも活用が進んでいます。
医療機器の許認可と対応
このシステムについて、東京都健康安全研究センターに確認したところ、「医療機器には該当しない」との回答 を得ました。
これは、RFIDシステムが「診療記録の転送・保管・表示」にとどまり、「疾病診断」「疾病治療」「疾病予防」には該当しないため です。
経営革新計画の承認とその効果
経営革新計画の申請時には、以下の点を明記しました。
- 東京都健康安全研究センターへ問い合わせた経緯
- 医療機器に該当しない根拠
この内容を記載することで、経営革新計画の承認を取得。さらに、以下の支援を活用しています。
✅ 政府系金融機関による低金利融資
✅ 補助金(ものづくり補助金)の申請中
✅ 東京都の市場開拓助成事業(展示会出展費の補助)
現在、この企業は積極的に展示会に出展し、新規顧客の開拓を進めています。
まとめ:医療向けシステム開発の成功ポイント
✔ 「医療機器に該当するか否か」を事前に確認する
✔ 経営革新計画の承認を活用し、融資や補助金を得る
✔ 景気の影響を受けにくい医療分野のビジネスモデルを構築する
医療向けのシステム開発を検討しているIT企業は、これらのポイントを踏まえて戦略を立てることが重要です。新規事業への挑戦を考えている方は、ぜひ参考にしてください。