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経営革新計画の承認事例について~IT企業の医療機器参入~

経営革新計画の承認事例について~IT企業の医療機器参入~

今回はIT企業が新商品として医療向けにシステム開発をした際の承認事例についてご紹介いたします。

当社はIT企業の顧客が大部分を占めております。IT企業の主な業務として「受託開発ソフトウェア業」「SES事業(システムインテグレーション事業のこと。システム開発やソフトウェアの開発、運用など企業に対して、ITエンジニアを派遣する事業のこと)」があります。世間一般的に言うIT企業とは、「受託開発ソフトウェア業」「SES事業」が大部分を占めているといっても過言ではありません。

新型コロナウイルス感染症拡大以降、リモートワークの普及、オンラインショッピングや非対面サービスや業務プロセスの自動化、AIがデータに収集、分析、活用を通じて、新しい価値を創出し、業務の効率化や意思決定の質を向上させるためにビッグデータを活用したビジネスが開発されるなど日本企業のDX化が急速に進んでいます。

DX化が進む中で「受託開発ソフトウェア業」「SES事業」を行う新規参入するIT企業も増えたことで競合他社との価格競争も激化しております。AI、IOT等の急速なIT技術の発達により品質の向上と最新技術に対応できる人材も求められています。

そのような状況にもかかわらず多くのIT企業が抱えている課題として「ITエンジニア不足」があげられます。経済産業省の試算によると2030年までにITエンジニアが79万人不足すると試算されています。

このような状況の中で経営革新計画の新規事業の類型として「新商品の開発又は生産」を行うために、新たな販路開拓拡大のために医療向けのシステムを開発する企業の事例をご紹介いたします。

AI歯科診断システムの開発

東京都内の創業2年目のIT企業の事例です。この企業は、SIer企業向けにシステム開発支援、クラウド設計・構築、導入支援を行っています。現状の下請け業務の多く、世の中の景気や元請となる企業の経営状況などによって左右されやすいというのが現状です。景気停滞している中で、企業も早期のDXを活用したビジネスモデルの構築を望んではいるが、短納期で、かつ、コスト削減を求めており、当社のような下請け業務の多い企業にしわ寄せがきています。。そこで今後、下請け業務の脱却と競合他社と差別化できるツールの開発と世の中の景気に左右されないサービスを提供して、販路拡大して事業をいかに拡大するかが課題となっています。

AI歯科診断システムの経営革新計画の内容

この企業がシステム開発を行うきっかけとなったのは、景気に左右されない業界でのビジネス展開を考えたときに「医療分野」であれば人々が健康的な生活を維持したい、または病気やケガから回復したいという基本的な需要は常に存在する。また。医療は公的な予算から賄われている部分が大きく、景気の影響を受けにくいなどを考慮された結果、医療分野の中でも「歯」は、口の健康は全身の健康に直結しています。歯周病や虫歯が進行すると、これが原因で心疾患や糖尿病のリスクが高まることが研究で示されています。歯科医院も全国に約6万8千件あり、コンビニエンスストアよりおおいといわれています。この企業においてAI歯科診断システムの開発を他社で所属していた際に開発した経験者もいることもあるため、開発も早期に行えると考え、AI技術を活用した歯科診断システムを開発して、歯科医院にシステムを提供するビジネスモデルを考えたとのことです。

医療機器の許認可について

東京都の申請受付機関で面談時にAI歯科診断システムを製造、販売するにあたり「医療機器の許認可」について質問されました。AI歯科診断システムの場合、東京都の医療機器の許認可の申請先である東京都健康安全研究センターに企業が確認したところ、医薬品医療機器等法の第2条第4項の医療機器に該当するとの回答でした。厳密に言うとAI歯科診断システムは「プログラム医療機器」に該当します。「プログラム医療機器」とは、医薬品医療機器法施行令で記載されている「プログラム」「プログラムを記録した記録媒体」とは、「疾病診断」「疾病治療」「疾病予防」のプログラム、プログラムを記録した記録媒体であることが掲載されています。また、医療機器に該当するプログラムとして、「医療機器で得られたデータ(画像を含む)を加工・処理し、診断し、診断又は治療に用いるための指標、画像、グラフなどを作成するプログラム」と定義されています。「疾病診断」「疾病治療」「疾病予防」のプログラムというのが医療機器に該当していると判断されました。

経営革新計画が承認された結果

「医療機器製造業登録」「第二種医療機器製造販売業許可取得」「医療機器(製品)の認証」する旨を記載することで経営革新計画の承認を受けることができました。この経営革新計画の承認により「政府系金融機関による低融資制度」「中小企業信用保険法の特例(東京都制度融資)」を受けることができました。現在、某歯科医療機関と共同開発しています。今後は、補助金申請を検討しています。この企業は創業2年目と若い企業であり、IT企業の中では後発企業であります。企業側は「新商品開発」を行っていることを対外的にもアピールすることで企業の信用力向上にもつながり、求職者にも企業をアピールすることで新たな人材の発掘し「ITエンジニア不足の解消」につなげたいと考えているとのことです。

RFIDを活用した医療向け血液管理システムの開発

東京都内の創業26年目のIT企業の事例です。この企業は、SES(システムエンジニアリングサービス事業)事業を中心に、システム開発請負業、自社商品開発をおこなっており、SES事業の割合が全体の8割を占めています。この企業は、「営業利益の黒字化」することが経営課題であり、新たな販路を開拓する多面日「自社商品開発事業を成長の柱にしたい」と考えています。新ン商品の開発するにあたりRFID技術に注目しました。RFIDタグや機器の性能向上と低価格化が進み、医療・医薬の分野でもRFIDの活用が進んでいます。「自社商品開発事業を成長の柱になるもの」と考えた時にRFIDの活用で現場や人に依存している負担の大きい作業の効率化や医療過誤の防止など現場にも管理者にも理想的な環境構築に役立てる技術であり、これを景気に左右されない医療業界に提案することで「営業利益の黒字化して新規顧客の開拓」ができると考えたとのことです。

医療機器の許認可について

東京都の申請受付機関で面談時にRFIDを活用した医療向江血液管理システムを製造、販売するにあたり「医療機器の許認可」について質問されました。AI歯科診断システムの場合、東京都の医療機器の許認可の申請先である東京都健康安全研究センターに企業が確認したところ、医薬品医療機器等法の第2条第4項に該当しないと回答を得たため許認可は不要との回答を得ました。医療機器に該当しないプログラムとして、「医療機器で取得したデータを、診療記録として用いるために転送、保管、表示を行うプログラム」と定義されています。この事例の場合、「疾病診断」「疾病治療」「疾病予防」のプログラムではないため、医療機器に該当していないと判断されました。

経営革新計画が承認された結果

医療向け商品について、「医療機器に該当しているか否か」についてかならず問われます。医療機器に該当しない場合についても、東京都の場合、「東京都健康安全研究センターについて問い合わせをしたことについての記載」「なぜ医療機器に該当しないのか」について申請書の記載する必要があります。この2点について記載したことにより経営革新計画の承認を受けることができました。この経営革新計画の承認により「政府系金融機関による低融資制度」「中小企業信用保険法の特例(東京都制度融資)」を受けることができました。経営革新計画の承認により審査が優遇されるというメリットを活用して一部開発費用をものづくり補助金を申請中です。さらにこの企業では、定期的に自社商品の展示会に出展しています。東京都の場合、「市場開拓助成事業」という展示会の出展費用を一東京都が補助する制度を経営革新計画の承認により申請中です。

まとめ

今回、IT企業の医療機器参入した場合の経営革新計画の事例について紹介いたしました。医療分野向けにシステムを開発する場合、「医療機器に該当するか否か」は必ず問われます。「医療機器に該当するか否かにかかわらず医療機器に該当するか否かは、必ず申請書に記載してください。東京都であれば東京都健康安全研究センター、東京都以外であれば各道府県の医療機器の許認可の申請窓口に問い合わせしてください。医療向けのシステムは開発費もかかるので経営革新計画の承認のメリットを生かして、「融資制度」「補助金制度」の活用をおすすめします。

新たに医療分野への参入を考えている方は参考にしてみてはいかがでしょうか。