経営革新計画と経営向上計画について解説

経営革新計画と経営向上計画について解説

経営革新計画や経営力向上計画は、国や地方自治体の支援策を受けるためのものです。名前も似たようなもので、どちらを利用してよいかわかりづらいという方もいらっしゃると思います。

そこで、今回は経営革新計画と経営力向上計画の違いについて解説します。

国や地方自治体の補助金を利用する際にも、審査加点として経営革新計画の承認や経営力向上計画の承認という言葉が出てきます。これから補助金を利用しようと検討されている方は、違いを把握して審査加点に繋げていただければと思います。

経営革新計画の目的と支援策の内容、策定時のポイントについて

経営革新計画の目的 中小企業等経営強化法という法律に基づき、中小企業が自社にとっての「新規業活動」の取組に対して「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する計画
経営革新計画の提出先 本社所在地である各都道府県に申請

「経営革新計画」は「新規事業」の取組に対して「経営の相当程度の向上」を図ることを目的としています。

これからチャレンジしたい計画がある際に計画を策定することで、現状の課題や目的が明確になる効果が期待できます。

策定した計画は本社所在地のある都道府県に申請します。

経営革新計画の支援策

①政府系金融機関である「株式会社日本政策金融公庫」において経営革新計画に基づく設備資金及び運転資金について、金利面などで優遇

②信用保証枠の特例

普通保証等に加えて、保証限度枠の別枠設定で金融機関から借入れる資金の借入が可能。

③中小企業投資育成株式会社からの投資

④起業支援ファンドからの投資

⑤海外展開事業者への支援制度

⑥海外投資関係保険(中小企業信用保険法の特例)

⑦特許関係料(審査請求料・特許料)の減免

⑧ものづくり補助金・事業承継・引継ぎ補助金の申請時の加点措置、助成金(東京都の場合:市場開拓助成事業)の申請資格の取得

⑨中小企業総合展(新価値創造展)出展募集時の優遇措置

⑩企業に勤めている外国人の人材の高度人材ビザ申請時のポイント加算

経営革新計画策定時のポイント

経営革新計画では、自社にとっての新しい取り組みとなる事業が対象となります。

自社が今までに提供したことのない商品、サービスへの取り組みであれば新規事業と判断されます。計画を策定するときには、「何を」「いつ」「どのように」実施するかということを盛り込んでいく必要があります。

経営力向上計画の目的と支援策、策定のポイントについて

経営力向上計画の目的 中小企業等経営力強化法という法律に基づき、人材育成、財務内容の分析、マーケティングの実施、IT投資、コスト管理等のマネジメント向上や生産性向上のための設備投資など自社の経営力を向上するために実施する計画
経営力向上計画の提出先 事業の対象分野を主管している大臣に申請

「経営力向上計画」は、現在行っている事業に対する取り組みとなり、人材育成や生産性向上のための設備投資など経営力を向上させるための計画を策定することを目的としています。

策定した計画は、計画に記載した事業の対象分野を主管する大臣に申請します。

たとえば、製造業の場合は経済産業省の大臣に申請します。

経営力向上計画の支援策

①政府系金融機関である「株式会社日本政策金融公庫」において経営革新計画に基づく設備資金及び運転資金について、金利面などで優遇

②信用保証枠の特例

普通保証等に加えて、保証限度枠の別枠設定で金融機関から借入れる資金の借入が可能。

③中小企業投資育成株式会社の特例

経営力向上計画の認定を受けると資本金3 億円を超える 株式会社(中小企業者)も中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることができる。

④日本政策金融公庫政策金融公庫のスタンドバイ・クレジット

日本公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を 受ける場合に、日本公庫による債務の保証を受けることができる。

⑤日本政策金融公庫から海外子会社への融資制度

経営力向上計画の認定を受けた中小企業(国内親会社)の海外子会社が日本政策金融公庫より経営力向上計画等の実施に必要な設備資金及び運転資金の融資が可能になる。

⑥中小企業基盤整備機構の債務保証の活用

経営力向上計画を実施に必要な資金を保証額最大25億円(保証割合 50%・保証料率有担保:0.3%、無担保:0.4%)の債務保証が受けられる。

⑦食品製造業者が食品等流通合理化促進機構に債務保証制度の活用

食品製造業者が経営力向上計画の実行する上で資金調達が必要となる場合に食品等流通合理化促進機構による債務保証が受けられる。。

⑨小規模事業者持続化補助金・事業承継・引継ぎ補助金の審査加点措置

⑩取得設備についての固定資産税の軽減や即時償却又は税額控除

経営力向上計画策定時のポイント

経営力向上計画では、経営力の向上を図るために現状の認識、経営力向上の内容、経営力向上のために必要な設備投資、投資に関する資金調達方法等を計画内容に盛り込む必要があります。

経営革新計画と経営力向上計画の違い

「経営革新計画」と「経営力向上計画」ともに金融、補助金審査加点措置等において支援策が共通していますが、税制優遇措置に違いがあります。

中小企業者などが指定事業のために、一定の設備を新規取得した場合、設備投資でかかった費用を事業初年度に経費として一括計上できる即時償却(一括償却)、または取得価額の10%の税額控除が選択可能です。

中小企業等経営強化税制の認定期間は、2017年4月1日から2023年12月31日までとなっていますが、期間は延長される可能性があります。また経営力向上計画の税制措置の中小企業経営強化税制はA~Dの4種類に分類されています。

A類型:生産性向上設備(生産性が旧モデルと比較して平均1%以上向上する設備)
B類型:収益力強化設備(投資収益率が年平均5%を上回る設備)
C類型:デジタル化設備(可視化・遠隔操作・自動制御化のいずれかに当てはまる設備)
D類型:経営資源集約化に資する設備(修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上の設備)

経営力向上計画策定の手引きより引用。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_keieiryoku.pdf

まとめ

「経営革新計画」と「経営力向上計画」の違いについて解説しました。計画策定の目的や申請先などは違いますが資金調達、補助金審査加点という面での支援策においては共通しています。

経営革新計画は落とすものではなく承認されるように都道府県窓口でアドバイスを行っています。そこで自社の課題、数値目標を明確にすることで、経営革新計画も目的である「新規事業の取組」に対して計画性をもって行えるようになります。

経営力向上計画は「既存事業における取組」ですが、経営革新計画で策定した計画を実行していく上で設備投資を行ったものに対して税制面での優遇措置を受けることも可能なため、両方利用するのがおすすめです。そこに融資、補助金等の施策も利用することにより、自社の事業を活性化させることが出来ると思います。

自社で「新規事業」「設備投資」を検討されている方は「経営革新計画」「経営力向上計画」を検討してみてはいかがでしょうか。